「耐震等級」とは、文字通り建物の地震に耐えうる力を等級で表したもので、耐震性能のひとつの目安となる指標になります。

完成見学会やお客様との打ち合わせの中で耐震性や壁倍率についてご質問される機会が多くあります。
また、先日2月13日の福島県沖地震やこれまでの震災の建物被害をメディアを通じて目の当たりにし、耐震性について関心を抱いている方もいらっしゃると思います。
今回の大工日記では「地震」と「耐震性」について理解を深めてみましょう。

まずは、地震の強さについて。
普段私たちは、地震の強さを「震度〇」という表現を使っています。
物理学においては地震の揺れ強さを「加速度=ガル」で表します。

自動車が発進する時に、ある大きさの速度に達するまでの時間が短かければ短いほど大きな加速度が加わります。急発進をすると座席に強く押し付けられるように感じられるのはこの加速度の仕業です。地震があると、地面の揺れによって建物や人に加速度が働きます。この作用した加速度の最大値を使って地震動の大きさを表わすことがあります。(「この地震ではこの場所で最大何ガルの加速度が生じた」と使います)これも大きい数値程大きな地震動であったことを表しています。

では、この地震の加速度がどのようにして建物に影響を与えるのか…
こちらはイラストでイメージをつかみましょう。

建物に外からかかる力を「外力」といい、地震力の他、風圧力・土圧や水圧などがあります。自然が発生させる外力は短期的なものがほとんですが、多雪地域においては積雪荷重が長期的な外力として挙げられます。

瞬間的な強い外力が建物にかかることにより、その歪みが発生する部位があります。これが柱の柱頭・柱脚の接合部にあたります。

木造軸組工法のように、柱と梁を基本として建物を支える構造では、柱と梁で形づくる長方形によって点と線で建物を支えます。しかし、この長方形の接合部分の強度が十分でなければ、地震や強風などによって横からの力(水平力)を受けたときに、長方形がひし形に変形してしまいます。そこで長方形の対角線に筋交いを入れて、水平力に対抗して変形を防止します。

筋交いは、圧縮する力と引っ張る力に耐える役割があります。長方形に対して斜めに1本だけ筋交いを入れる場合を「シングル」、2本交差させるものを「ダブル」または「たすきがけ」と呼び、「たすきがけ」のほうが強度はあります。ただし、柱や梁に十分な太さと強度がある場合や、2×4工法・軸組工法+構造用合板などの面材で壁面全体で支える場合には、筋交いは不要になります。また、筋交いによる補強は、柱や梁と強固に固定されていることが重要です。

この柱と柱の間に筋交いを入れたり、柱と柱を面材で固定することによって、耐力壁を確保します。

筋交いがシングルなのかダブルなのか、はたまた面材なのかによって、耐力壁の倍率がかわります。
柱と梁で構成される長方形の歪みが生じにくい強固なものほど倍率は高くなります。(上図参照)

耐力壁と耐震性の関りについて…次の記事につづきます。