前回の記事では、「地震」と「耐力」についてなんとなくでもイメージをつかんでいただけたでしょうか?

~前回のおさらい~
簡単にまとめてみました。
①地震の加速度が大きければ大きいほど建物に与える影響が大きい。
②外力の影響は、柱の接合部に生じやすい。
③外力に対抗するために「筋交い」「面材」の耐力壁を確保し補強する。

前回に続き、今回は「耐力」の部分に着目してご説明したいと思います。

建物が地震や風圧力など外力によって損壊しない性質のことを「耐震性」といいます。
「耐震性」は「耐力壁」を確保することで得られる性質で、
「耐震性」が高いほど強い外力を受けても倒壊したり、破損しにくくなります。耐震性を示す基準として耐震等級が使われているわけですが…
3段階ある「耐震等級」の差まで読み解いたことはありますでしょうか?

インターネットで検索するとだいたいは下記のように説明が載っています。

等級2・3は「等級1の数倍の地震力に対抗」とありますが、倍数だけの記載では一般の方は非常に理解しにくいものだと思います。

等級ごとの倍数を筋交いの量で表すと…

単純な話、筋交いの量が増えるということです。
筋交いの量が増える(=耐力壁が増える)ことで1回目の揺れで破断(破損)した筋交いがある中でも、繰り返し発生する揺れに建物が耐えられるということです。

例えていうならば、下記ようなイメージです。
等級1:1回目の地震には耐えたが壁面に亀裂が発生。
    2回目の揺れで建物が傾いた。
等級2:1回目、2回目の地震には耐えた。
    3回目の揺れで損傷が見られ、4回目に傾いた。
等級3:3回目の揺れまで耐えた。
    4回目の揺れで損傷発生、5回目傾いた。
※例え話なので揺れの大きさは未知数・揺れの回数などは比較しやすいよう表したものであくまでも参考です。

5年前の熊本地震は前震と本震がありました。
昭和56年以前の建物は筋交いの量が非常に少なかったため、
前震の時点で筋交いはダメージを受け、
ダメージを受けた状態の筋交いはもはや耐力としての役割を担えず、前震よりも激しく揺れる本震を受け倒壊しました。

昭和56年は建築基準法施行令の大改正があり耐震設計が見直された年です。
また、平成12年も建築基準法改正があり、接合部の金物緊結が義務化され、耐力壁の配置にバランスを考慮するよう法律の変遷を経て現在に至ります。

耐震基準が出来てから(旧耐震基準)約半世紀が経ちましたが、設計・検査基準の改良が進み新建材の活用もあり、建築においては住まう人の安全確保が最重要視されています。