建て方から一月が経ったS様邸の進捗は、外周面の防水・断熱工事を終え
気密工事の只中です。

外周の壁体内には断熱材が充填され、柱の外側に耐力面材(MOISS)・防水遮熱シートが施工されています。

『遮熱』と『断熱』言葉で見ると似ている2つですが、建物ではそれぞれが別々の役割を担っています。

断熱材の役割は、「物理・科学的物性により熱移動・熱伝達を減少させる」
遮熱の役割は、「熱(輻射熱)を反射させて跳ね返す」

少し難い話になりますが…
熱を運ぶ方法には、熱移動の3原則と言われる『伝導・対流・輻射』の3種類で行われています。ポイントは、熱が何によって運ばれるかです。
そもそも「熱」は、高温部から低温部へと移動する性質を持っています。

■伝導:物体を伝わって熱が移動すること
■対流:空気が移動することによって熱が移動する現象
■輻射:熱源やあたためた物体から放出される熱のこと

夏場の「室内で冷房を稼働している場合」建築物の熱移動の構成は上図の様になっています。

屋外より室内の方が温度が低い為、熱の移動は「屋外から室内へ」となります。

冬場は暖房で暖められた室内の方が温度が高い為、熱移動は「室内から屋外へ」と夏と逆転します。

断熱材は、そのものに伝わってきた熱を断熱材の内部に取り込むことによって、熱の伝達・移動を減らしたり、遅らせることで熱の移動を妨げています。

一方、遮熱材は太陽からの電磁波を遮ります。地球が太陽によってあたためられるのも、決して太陽の熱が地球に届いているわけではありません。太陽からの電磁波により物質の分子が振動して熱を帯び、その輻射熱を放射しているのが原理です。

改正が繰り返されている省エネルギー基準としてUA値という『外皮平均熱貫流率』は主に断熱性に重点を置かれいる為、一般的には断熱性能だけを強く推すメーカーが多いと思います。
ですが、物理的に熱移動の比率は、『伝導5%』・『対流20%』・『輻射75%』です。
断熱材で25%の熱移動を抑制し、遮熱材(遮熱シート)で75%の熱移動を遮る。
建物の性能を向上させるには断熱だけでなく遮熱も重要です。
『真の断熱性能』は、断熱と遮熱の両者があってこそ成り立つのです。